-絶え間なく鍛えた者だけに栄誉が訪れる-

2008-11-03

LSDの功罪

今シーズンの反省のひとつとしてLSDについて思うところがあるのでメモしておく。

LSD、つまり Log Slow Distance.ゆっくりとしたペースで長距離(通常は30km以上だろうか?)を走るという練習。
期待される効果としては「ゆっくり走れば速くなる」(佐々木功)、「新・ゆっくり走れば速くなる」(浅井えり子)に書かれているのでここでは割愛するが両著者の言う効果よりは、実際に試した自分としては「距離に対する耐性がつく」と「ペースを守るセルフコントロールが養われる」と思うというのが実感だ。

昨シーズンの別海町パイロットマラソンの反省から30km以上のランニングの重要性を感じ、氷点下の中ある意味喜んでLSDに取り組んだ。
今思えば、単に走るだけなら面白くもなかったかもしれないが、氷点下7度、氷点下15度、氷点下20度という極寒の中を走ってみるというのは齢50に手が届く自分にとっては子供のころにあったワクワクするようなちょっとした冒険心を覚醒させてくれた。
そんな甲斐もあって、春になると30kmを走るのに苦痛(肉体的、精神的)はもちろん、距離に対する警戒心も薄らいで来ていた。
以前なら25kmなら良いけど30kmは嫌だ!と思っていたのに、30kmなら「普通」、35km「まぁ良いか」というような意識レベルだ。ただ、今になっても練習で「40kmを走る意味が分からない」(大笑)。

もちろん、急に30kmをそういう気持ちで走れるようになったワケではない。LSDの必要性を感じていたので、最初のころは仕方なしに相当の我慢をしつつ30kmを走った。日暮れまでには帰れると思ったのに思いの外遅くなり、寒くて泣きながら帰宅して女房にあきれられたこともある(大笑)。
それでも、3週連続で3回もやれば少なくても距離に対する抵抗感はなくなったと記憶している。

LSDの回数が増えた理由は先に書いた「ちょっとした冒険気分」の他に、仲間の存在も大きい。
去年は厚内LSDを皮切りに茅沼LSD、標茶LSD、更別LSDなど遠足風に楽しく(後半は脚に来ているので楽しくないんだけど)走れた。
だいたいのところ仲間と走るLSDは「Laugh」「Smaile」「Discover」になる。
ゆっくりと走ると心肺的にも体力的にも余裕があり、体験談や伝聞情報などおしゃべりしながら(かなりの馬鹿話や下ネタ、時には牛を呼び集める実験をしたり)のランになり、Laugh(声を出して笑う)、Smaile(なごやかな雰囲気なので自然に笑みがこぼれる)、あらたな仲間との出会いや風景、話に触発されてDiscover(発見)があったりする。

標茶の温泉に到着して、おかみさんに「どっから走ってきたの?」に「釧路から」と答えて「なんで?」と聞かれ「走りたいから」と答えたときのイタズラっぽい雰囲気ったら子供のころに帰ったように面白かった。
正当なLSDだろうが、楽しいLSDだろうが30kmを走ることには変わりないし、練習は距離じゃないというのは分かっていてもJogNoteなんかでギュッとグラフが伸びるというのはかなりの達成感がある。
ひとことで言えば、そういうことが全部「面白い」のである。

こうしたLSD(練習)の面白さという効果の他に、実質的な効果は先に実感として書いた「距離対する抵抗感がなくなる」ので気持ち的にフルマラソンが楽に走れる。また、ゆっくり走るというペースコントロールができるようになっているので目標ペース(無理のないペース)を維持しながら(前半は我慢、後半は頑張って)走れるようになったと思う。
洞爺湖マラソンで楽に走れたのも、北海道マラソンで頑張れたのもLSDの実践的な効果の現れだと思う。


ところがLSDの悪いところはこの面白さにある。
僕の今シーズンの場合、この面白さに夢中になって「追い込む練習」を避けて来てしまった。
それでも洞爺湖マラソンでは「楽に」自己記録を更新してしまったものだから今シーズンは勘違いのシーズンになってしまった。
そう「今年の僕は去年よりも速い」説。

白糠(10km)は、開幕戦だしまだ速い練習ができてなかった時期でもあり、どこか言い訳していた部分もあるが、今思えば一年間スピードに対しては言い訳というか「今月こそ追い込もう」という後回しにしていた。

マラソンとは言え、タイムを競う(自分のベストと)競技である以上「スピード」が正義なのだ。

僕レベルのランナーならフルマラソンならペース配分でゴールタイムは5分程度は延びもすれば縮みもする。
LSDが楽しい練習であるが故に、僕は辛いスピードを求める練習を回避していたに違いない。


一昨年は、自分的にはワンランクアップしたスピードレベルに引き上げることができた。それは冬期間のスピードを重視した練習をしていたからだと思う。

今年のオフは、スピードを重視した練習をしようと思っている。
ただ、面白いものはやめられないので月に2回くらいはLSDをしなくちゃね(笑)

18 コメント:

匿名 さんのコメント...

LDSがラフ・スマイル・ディスカバーとは思わず核心をつく解釈であり、感服してしまった。ただ一人のLSDでラフしたり、スマイルしたりすると危険ではある。私はときどき一人LSDでこれをやっちまって通行人に白い眼を向けられていることは報告しておきます。

しなそば さんのコメント...

スピードを重視した練習、も付き合いますよ!
短めの周回コースだったら
それぞれのペースとか、アオったり、アオられたりとか
けっこう、楽しめそうな気がします。

たしろ さんのコメント...

To:カナダさん
ひとりでニヤつくと危険です(笑)。
ただ、それは僕にも分かります。やはりランナーはある意味危険領域に入っているような気がしてなりません(笑)。

たしろ さんのコメント...

To:しなそばさん
僕が煽ることは不可能ですが、煽られてみたいです。
というか、自在に煽られてもてあそばれことになるのでしょうが、ちょっといたぶられてみたい気持ちはあります。
ランナーの精神状態は、やはり危険ですね(笑)。

匿名 さんのコメント...

おはようございます

2日に沖縄で開催された尚巴志ハーフマラソンに出場してきました。最大の難所、新里ビラ(5km地点、1.2km続く高低差150mの急坂)でかなりのダメージを負ったらしく、中間点を過ぎた当たりから左大腿の筋肉が痙攣し始めました。こんなことで棄権などしたら、応援して下さった皆様に申し訳が立ちません。下りのニライカナイ橋(すごい絶景!)ではどんどん抜かれましたが、ぐっと我慢をして足が回復するのを待ちました。それが功を奏してなんとか覇者の門を走り抜けました。タイムは自己ベストから15分も遅い1時間57分でしたが、(男子ハーフの部)約3600人中、454位とかなり良い成績でした。過酷なレースということがそれに表れています。こんなに辛かったレースはなかったです。NAHAマラソンの時と同じく沿道の応援が素晴らしく、途中豪雨に見舞われましたが皆さん傘もささず、ずぶ濡れになって笑顔で応援して下さいました。途中で折れそうになった心を助けてくれたのは、素晴らしき沿道の皆さん、沖縄の友人達、そして妻と娘達でした。マラソンは一人で走るスポーツですが、一人では生きていけないと言うことを教えてくれるスポーツでもあります。沖縄は私をまた一回り大きくしてくれました。こんな素晴らしきレースの後、いまだ軽く燃え尽きている感じです(笑)

柴又・吉田

たしろ さんのコメント...

To:吉田さん
お疲れさまでした。
グッと我慢のハーフマラソン、なかなか充実した走りができたようでなによりです。

匿名 さんのコメント...

たしろさん、初めまして可朝と申します。
今年の6月に走り始めたころから、ずっとここを参考にさせていただいています。
過去の記事も読ませていただきました。
これらかも詳細かつ緻密に分析されたトレーニング日誌を楽しみにしていますので、よろしくお願いします。

たしろ さんのコメント...

To:可朝さん
はじめまして
どこが参考になるのか当の本人には全然分かりませんが、喜んでいただければ嬉しいです。
今後もよろしくお願いします。

kotobuki さんのコメント...

11月7日がキターーーー!
東京マラソンの抽選結果の通知が始まりましたね・・・って、ほとんど期待はしてませんが。

その日が決まったら、私もLSD教の信者になりそうです(笑)。

たしろ さんのコメント...

To:kotobukiさん
ああ、今日でしたか。
僕はもし当たったら「ちょっと困るなぁ」と思っています(笑)。
激しく悩むところです。

匿名 さんのコメント...

やりました!

当選しましたよ〜

たしろさんは如何でしたか?

困ったなんておっしゃらずに一緒に走りましょう。

吉田

たしろ さんのコメント...

To:吉田さん
むむ、当選おめでとうございます。
僕のところへはまだ通知が来ていません(笑)。

あれです。しがないサラリーマン、しかも帯広から東京までの飛行機も一日4便と猛烈に不便なところにあります(涙)。
本当に当たるとあらゆる手配が大変になります。

当たって欲しいような、当たらないで欲しいような微妙なおやぢ心なワケです。

匿名 さんのコメント...

はじめましてRYです。楽しく拝見させていただいています。いつも更新されるのが楽しみでしょうがありません。レベルが高すぎて参考になりませんが(笑 いや失礼しました)説得力があり、すばらしいブログですね。さて唐突な質問で申し訳ありませんがフラット走法ってどう思いますか?現在主流の走りみたいですが、自分には効率いいとはあまり思わないのです(せいぜいハーフまでしか通用しないのではと)・・・まあ筋力骨格は人それぞれ違うのでなんともいえません。足のつけねの上(腹筋の下)を意識してかかと→足裏→つまさきの順での着地のほうがスピードを長く維持できるんじゃないかと思っています。とくに下りはブレーキがかからず楽です。たしろさんなりの見解をぜひお願いします。ちなみに僕は、ローリングもどきですが自分にあったフォーム模索中です。

匿名 さんのコメント...

いつも楽しく拝見しています。
現状把握を含めてスピード系トレーニングをするためにも、久々にFit.Testなんてどうですかね?
僕の国も既にシーズンオフです。
年内はメンテナンス&来年の参加レース選定&トレーニング計画です。
とりあえず、冬の間は徹底的にLSDとウェイトで過ごそうと考えています。
既に来年のレースでゴールするイメージが勝手にわいてる脳天気野郎です。

たしろ さんのコメント...

To:RYさん
はじめまして、読んでいただき嬉しいです。
レベルが高いとおっしゃいますが思いつきや妄想を書いているだけなので、どちらかというとなんの根拠もないかなり低レベルだと思います。真に受けてはいけませんよ(笑)。

さてフラット走法ですが、フラット走法が現在の主流なのか?
僕は過去にNB M800Fの後段に書いた通りランナー「1/4」がフラットあるいはフラット近似の着地をしている事実と当時の泣く子も黙る高橋尚子に代表されるトップランナーの走法との因果関係を例示しているに過ぎないと割り切って理解しています。

僕も基本は「踵」>「足裏」>「つま先」の順に体重移動(重心移動?)が行われるのだと思いますが、踵の着地が踵の後端での着地はブレーキがかかるだけだと思っています。
書くと長くなるので、ここでは詳細は書きませんが要はどこで着地するかを意識するのではなく、接地中にブレーキのかかる要素を軽減する体重移動をするにはどういう身体(上半身、下半身、脚、足)の動きが効率的なのか?という視点で自分に合ったフォームを模索するのが良いような気がします。その結果が踵着地、フラット着地に分類されるのではないでしょうか?

たしろ さんのコメント...

To:越中のお馬鹿さん
すっかり忘れていました>Fit.Test
今度、やってみましょう。

僕もウエイトトレーニングというか、いわゆる筋トレ(上半身)に時間を割こうと思っています。
ジムのインストラクターに相談しながらメニューを考えてもらおうと思っています。
来年の為に良いイメージの妄想を抱きつつトレーニングするのはモチベーションを保つ意味でも、とても良いことですね。僕も良いイメージを持ち続けて頑張りたいと思います。

匿名 さんのコメント...

早速ありがとうございます。なるほど~一部分ばかりをみないで体の動きをトータルで考えるということですね。ロスをできるかぎり抑え効率的な動きをする(そのために必要な筋力のレベルアップも怠らない)フォームを自分のものにできるよう試行錯誤を楽しむことにしようっと。いや~ランは単純だけど奥が深い!1つ1つの小パズルを組み立てて1つの完成品をつくるみたいで                 明日の苫小牧は、今までやってきたことを試し今月末のつくば→来年の洞爺、道マラにつなげるレースにし何かを得たいと思います。   RYでした。              

たしろ さんのコメント...

To:RYさん
明日は苫小牧のフルマラソン挑戦会でしたか!
今年の集大成となることをお祈り申し上げます。

ご自分の考えたことを試し、反省し、再び試すという試行錯誤も楽しみの一つだと思います。僕もいろいろと周り道をしながら試しているのですが、面白いですよ(笑)