降雪のため浦幌LSDが中止になったので、退屈しのぎに図書館で借りて来た。
「チーム」堂場瞬一著(実業之日本社)
ページ数は300ページ程度。題材が駅伝なので、僕はあまり読むのが早い方じゃないと思うがランナーの端くれであり、興味深く一気に読み終える。
ストーリーとしては陳腐というか、正義感(使命感)あふれる主人公がいて、実力ピカイチであるが反目する悪役がいる。そして、おちゃらけた主人公の友人がいるというよくある話。
要は、青春の傷心(あるいは挫折)からの復活への曲折を描いたもの。といったところだろうか。
チームというと僕としては、同じ釜の飯を食った仲間というような連帯感(一体性)のあるひとかたまりの集団を想起する。
駅伝ものの小説としては「風が強く吹いている」を読んだが、こちらのチームは、とある大学の陸上部のメンバーのお話しで、学校、練習や寝食を共にして苦楽を言わずもがななひとかたまりの集団が予選会を勝ち抜き、箱根駅伝本番で次の年のシード権を取るという目標の為に個々が工夫しつつ奮闘するというようなお話しだった。
この著書の「チーム」は箱根駅伝の予選会で予選落ちした各校のチームのなかから選抜された選手(予選不通過な学校の中から個人記録の優秀な個人)による「学連選抜チーム」のお話し。
確かに箱根を駅伝で走る集団ではあるのだが、所属する大学が異なるばかりか、個々の目標や追い求める夢が微妙に違う選手によって予選会直後の10月に構成された集団である。
所属校が箱根に出ないのに自分が走る意味を問い悩む者、夢の箱根を走るチャンスではあるが自らの力を過小評価し諦めたようにふるまう者、個人の能力だけを発揮することに集中する者...
個々の記録をつなぎ合わせれば優勝候補にひけを取らないそんな寄せ集め集団が翌年1月2、3日の本番までにチームとして戦う一体感を醸成することはできるのだろうか?チームとは?襷とは?襷に込めて運ばれるものはなにか。
ストーリーは陳腐でありふれたものだが、読む人がそれぞれに答えを見いだせる本だと思う。
「★★★☆☆」
ちなみに今年の関東学連選抜は総合9位でゴール。見事にシード枠を予選会に引き戻した。
--2009/02/09追記
ところで、予選会と本戦?について以前はせがわさんに興味深い話を聞いたので書き添えておく。
箱根駅伝の予選会は10月の末ころ行われる(昨年は10月18日)。予選通過ギリギリの各校は、ここぞとばかりここがピークになるよう調整する。
その後、正味2ヶ月で本戦を迎えるわけだが、この2ヶ月間で「疲労の回復」そして、本戦時に「再びピークを持ってくる」ことは不可能だとのこと。
ここで誤解のないように書き添える。
予選会から本戦を狙う各校、各選手は2ヶ月で疲労が抜けるような緩い走りでは予選会を勝ち抜けない。らしい。
故障覚悟かどうか知らないが、とにかく目一杯の走りを予選会でするらしい。
予選会のやり方は既にご存じの方も多いと思うが、要は約500人が一斉にスタートし、各校上位10人(各校10人以上、12人まで出場のうち)のタイム合計で競われる。予選会の戦略としては相互に助け合いながら(引っ張り役、風よけ役など)「集団を形成」しゴールを目指すそうだ。そうは言っても諸般の事情で遅れる者もいるだろう。次第に集団はばらけ力のあるものが、遅れたもののタイムを稼ぐ役にまわらねばならない。当然、遅れたものだって1秒でも速くゴールしなければならない。誰ひとり気を抜いた走りがゆるされない状況で、ひとりなら止められるレースでも予選会ではやめられない。
そんなことを思い出したものだから、今年の箱根駅伝をちょっと調べて見た。もちろん、テレビで観戦した記憶を呼び起こしながら。
予選会で勝ち上がった日体大、明治が来年のシード権を手にした。
日体大は6/10人、明治は5/10人、国士舘が5/10人が予選会からの連闘だった。
予選会、本戦とチームとしての力を十分に発揮したと思うし、伝統校ゆえの選手層の厚さもあったと思う。
予選会の上位3チームは城西、東京農大、上武の3校だが、東農大の12位が最高位で、あとは20位以下。城西は5/10人、東農大と上武はなんと7/10人が予選会からの連闘だった。
東農大については鶴見中継所で7位で受けた襷がゴールしたのは12位だった。先の苛酷な予選会の性質を知ると胸が熱くなる。7/10人が連闘にもかかわらず「よく頑張った」と、そんな陳腐なねぎらいしかできない自分が情けなく思う。
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