-絶え間なく鍛えた者だけに栄誉が訪れる-

2008-02-21

フィットする靴-板かまぼこからひょうたん理論-

ランニングシューズに関してお悩みの方が多いということを思い知らされた一週間だった。
先日書いた「正しいヒールロックの履き方-私的理解-」がシューズマスターのブログで紹介され、その初日には読者数が延べ800人を越えてしまった。

そして、今でもコメント欄や私信で色々と問い合わせ(質問等)を頂戴している。

申し上げておくが、僕は普通以下の(不摂生で、ラクしたがりのなんちゃって)ランナーに過ぎない。
自分の体験談や空想(あるいは妄想や思い込み)の話はできても理論上正しいお話はしたくても出来ないということをご承知おき願いたい。

で、先ほどは「幅が合わない、ホールドの甘い検証実験」について投稿した。

この際だからかねてから暖めていた「正しい靴の選び方というのは多分こういうことだろう」ということについて、「板かまぼこからひょうたん理論」をもって説明してみようかと思う。

まず、ランナーにとって良い靴というのどんな靴なのかということだが、これは先日の「正しいヒールロックの履き方-私的理解-」の後段に書いたが、再度ご紹介する。

いつまでもシッカリと足と靴の一体感が損なわれず、運動中に靴の性能を享受できる靴。
であると結論づけた。

単純化のため膝や腰などへの負担を軽減する各種機能は考慮外とすれば、要は長時間(長距離)をつかってもフィット感の損なわれない靴が良い靴ということになる。

靴のフィット感とは?が問題になるが日本語としては「ぴったりサイズ」と言え、靴の中で足が遊ばないという空間的視点、足ざわりというか風合いやホールド感などの感覚的な視点が満たされた時に「フィットする」というのだと思う。
後者の感覚的な視点は千差万別なので、フィット感を他者と共有共感することは難しい。

したがって、先ずは空間的な視点から数点靴選び出し、その後嗜好に応じて感覚的な視点から靴を最終決定すれば良いことになる。(一応、説明上の単純化のためいわゆる保安機能は度外視しているが、実際のシューズ選びに際しては「保安機能」は考慮すべき必須の項目である。)

足と靴の関係について、まず足のサイズ理論的要素について理解したい。
わが国には「日本工業規格」(JIS)があるが、靴のサイズについて分かりやすいのが「丸正靴店」の「サイズとワイズと靴の選び方」なので紹介しておく。

特に「足長」「足幅」「足囲」の定義を理解してもらいたい。

左図の「板かまぼこ」のイメージ図を使って説明する(板かまぼこからひょうたん理論らしく)。
板かまぼこ全体が靴であり、板がソール(底)で、かまぼこ本体は中空のイメージ。この場合、
足長=板の長さ
足幅=板の幅
足囲=かまぼこ断面の周長(太線)
ということなる。

足長は良くご存知だと思うが、足幅や足囲についてはその違いをよく理解していただきたい。
そうしないと、シューズマスターの言う「幅」の意味が混同してしまうケースがある。もっとも足囲は「width」(ウィズ)と書くので「Wide」の幅と誤認しやすいように思う(僕も誤認していた)。

「幅」についてもうひとつ重要なことがある。それは、足は「幅」よりも広いところがない。ということ。

先ほど紹介したWebページの「ステップ1=測定」をも参照願いたいが、
板かまぼこからひょうたん理論の「幅」はこのページで説明しているC、D間であり、これより幅の広いところは「踵側」にも「つま先側」にも存在しない。このことは忘れないで欲しい(ここ、テストに出るぞぉ~)。

最初に絶対に選んではいけない靴についてだが、板の「幅」から足がはみ出る靴はダメ(らしい)。
通称「棚落ち」というらしい。(図の場合、棚落ちというより「板落ち」だが)
なぜダメなのか?ということになると、これは僕の想像だが「安定性が欠如する」「怪我の可能性が増大する」ということだろうと推察している。こういう靴では自分の靴の底の高さで常に足をくじく可能性がある
ことは想像に難くない。
ショップで、棚落ちしていないかの検証方法としては、試し履きしている靴のインソールを取り出して、そのインソールに自分の足を乗せて見比べれば分かるのではないだろうか。

シューズあわせの実践的手順
これはシューズマスターのブログの記事を網羅的に読んだ記憶(記憶なので曖昧なところもある)と僕自身の経験を書く。
注意事項は1時間はかかるので時間に余裕をもっておくこと。靴は必ず両足履くこと(入らない場合は除く:笑)くらいだろうか。試し履きする時間帯はあまり関係ないらしい。
  1. まず、狙ったモデルをひとつに絞る。(1日に試し履きは3足までなので、複数モデルを試すと混乱するだけ)
  2. 今、履いている靴のサイズの1cm下のサイズから足を入れる。
  3. 足が入ったらヒールロックの手順で履いてみる。入らなかったら0.5cmサイズアップして足入れからやりなおす。(つま先が当たる場合は避けた方が無難。気にならなければOKらしい)
  4. 棚落ち、指先が当たり気になってしまう場合(痛い場合)は0.5cmサイズアップして「3」に戻る。足長、幅に余裕を感じたら0.5cmサイズダウンして「3」に戻る。特に問題なさそうなら次へ
  5. シューズを両足に履いたままウロウロしてみる。トレッドミルなどで試走できるショップならさせてもらう。とにかく少し長目の時間履いて歩く(座らずにほかの商品を見るとかして時間をつぶす)。途中「ゆるく感じる」「キツク感じる」様になったら「ヒールロックをやり直す」。そして次の3つについて注釈部分に書いた注意事項を理解の上、自己評価する(自分のことなので自己評価するしかない)。
    1. 「踵」のホールドはしっかりしているか?
    2. 「幅」は大きくないか?
    3. 中足のホールド感はどうだ?
    4. このまま30km走れるか?自問する。
    5. 「Yes」ならレジへ、「No」なら次へ
  6. 今日試し履きを3足した「Yes」なら今日は帰る。「No」なら0.5cmサイズアップして「2」へ(この段階では多分大きなサイズになっていないと思う。もし、大きいと感じたのなら「サイズダウン」して「2」へ)

注釈
5の意思決定に際に重要なのが「幅」と「踵」のフィッティングだと思う。
この点、シューズマスターは「幅」だと口をすっぱくして言っている(書いている)が「踵」のホールドがダメなら全てダメとも言っているので「踵」のホールド性が最重要だと思う。
なぜなら踵は
ヒールロックの根幹であるのでこれがグラつくようでは「ロック」のしようがない。また、踵は「コルクシート」等による手軽な調整が出来ないというチューニングの難易の問題もあると推察している。

踵をOKと評価したら次は5-2の「幅」が問題になる。
さて、問題です。足の幅よりも靴の幅(板かまぼこの板幅)が広い場合、靴の中で足が遊んじゃいます。こういう靴は選んではいけませんが、それはなぜでしょうか?
答え、幅が広いので左右に動くのは当然だが、足には足幅(C,D間)よりも広い部分がないので、足(指)の先端から踵の後端まで自在に動いてしまうことになる。そうなってしまっては、ヒールロックの意味もなさなくなるから。参照幅が合わない、ホールドの甘い靴の検証実験

左のひょうたんのような図は足型のイメージ(板かまぼこからひょうたん理論)。上方がつま先方、下方が踵だ。
ヒールロックは「踵」が靴の中で動かないこと、幅がしっかりとフィットしていることを前提として、「寄せて」「上げて」「留めて」「ヒールロック」することによりフィット感を出す。
ここでもう一度、先の「足は幅以上に広いところがない」を思い出してほしい。足幅が「ひょうたんの幅」と一致しているならつま先方へも踵方へも動かないという理屈はお分かりいただけると思う。
とりわけ、矢印の部分の凹面のある中足をしっかりと靴とホールドさせることによってシューズと足の一体感を出し、足の前後への移動を防ぎ、フィット感の効果を持続させるというのが本質だろうと推察している。


幅について「ちょっと広い気がする」「ちょっとホールドが甘いような気がする」場合に「コルクシートチューン」で対処できる場合がある。

左図は板かまぼこ断面図でありちょっと見づらいが、板の上にコルクシートを乗せたイメージを書いた。
分かりやすくするする為、かまぼこの部分を半円状に書いた。したがって、板幅がこの円の直径のイメージになる。

コルクシートの厚みの分だけ上方への距離(高さ)が縮まり、またコルクの厚みに影響されて直径も狭くなることになり、フィット感、ホールド感を増すことが期待できる。
また、逆にちょっと「狭く」「キツク」感じる場合にはインソールを取り払い、薄手のインソールに交換することによって、心地よいフィット感とホールド感を出すことができる場合もある。

これらの方法は「もうちょっと」の調整に試してみる価値はある。

しかし、これらはあくまで「対処的」なものであり、シューズ選びの本質は「踵」「幅」がちゃんとフィットしていて、中足でしっかりホールドできる靴を探すことにあるということは忘れてはならない。

シューズマスターが「幅」について口をすっぱくして言うのは、足型診断、ボディーバランス診断を行い日本人の数多くの足を見つめ続け統計的に日本人の足は「幅は狭い」「踵は小さい」ということ知るシューズマスターだからこそだと思う。
いつのまにやら、どこからともなく(根拠なくらしい)「日本人は幅広」が定説とさえなっている現状を憂い警鐘を鳴らされているのだと思量する。
幅広の靴を履くことの身体、健康への影響もあるようですが、僕の記事の趣旨ではありませんので割愛します。
幅がフィットする靴を探すのになぜ足長の小さい靴から履いていくんだ?という疑問があるがある。
冒頭部分で紹介した「丸正靴店」の「サイズとワイズと靴の選び方」の後段に「特大のおまけ」としてJIS規格の一覧表がある。

靴は本来このマトリックスの分だけサイズがあるハズなのだが、実際には幅や足周が「E」とか「EE」で、各種足長毎というのが現実だし、そもそも足長や足幅、足囲サイズってメーカーやモデルによって違うということは経験的に分かっている。

そういう現状を踏まえた上で、足長が短いほど幅が狭いという理屈なのだから「幅狭い足」に合わせるなら足長の短いサイズに足を入れて落としどころを手探り(足探り)で探すという不合理な方法しかないのが現実ではないか思う。

ある意味、各メーカーが販売している無数の靴の中から自分にあった靴を探し出すのは「砂場に落としたダイヤを探すようなもん」だと思う。
「シンデレラシューズ」なんて言われ方も理解できるような気がする。

そこで、次善の策ではあるが、結論としては「いつまでもシッカリと足と靴の一体感が損なわれず履ける靴。」を探すことになるのだと僕は理解している。

つまり、バッチリジャストフィットだぜ!というのではなく、
  • 踵は命、これが自分にあった靴。
  • 幅はできるだけ自分にあった靴。
  • ヒールロックでホールドがし易い構造の靴。
  • コルクシート(あるいは、厚手のソックスとか)やフィット感やホールド感の調整が可能な靴。
を選び、チューンを施しながら「足と靴の一体感が得られる靴」を探すというのが現実解だろうと思量する。

最後に何度も申し上げますが僕は靴とは無関係な業種のサラリーマンで、靴や人間の体、運動理論等まったくと言っていいほど知見のない人間です。
ここに書いたことは自分自身の観察により感じたこと、考えたこと、実践したことを体験談として紹介しているに過ぎません。
ここの内容を鵜呑みにしても得るところがないと思います。読者自身が試行錯誤なさる過程でなにがしかの参考になれば嬉しく思います。

2 コメント:

匿名 さんのコメント...

T.Yです。
幅が合わない、ホールドの甘い靴の検証実験で「Reebok PREMIER TRINITY KFSII 27.5cm(平紐に交換)では寄せて上げて留めてでもつま先ノックで動きます。」と書きましたが、その27.5cmの靴ですが2mmのコルクシートを買ってきてインソールの下に敷いてみました。
結果ですが、つま先ノックでは動かなくなりました。
やったぜ。いいかな。と思ったんですが、27.0のでは踵が全くといっていいほどずれないのに27.5のではコルクを入れても踵が思いっきりずれてしまいます。
(ASICSの分析によると踵の幅が極端に狭いと出ているので多分そのせいでしょう。)
インソールの踵部の幅をを比べてみると27.5のは67mm。27.0のは64mm。この差はそのまま踵部の内部幅の差として効いているようです。

>「踵は命、これが自分にあった靴」ってのは本当に大事ですね。

で、救済策ですが、前にアキレス腱を痛めたときに買ったマウントシェルという踵部のサポータを持っているので、それを装着すると27.5のでも踵の横幅が少し広がるので何とか固定に近いところまでいきます。(完全に固定ではなく微妙にずれるのだが・・・)
27.5cmのはマウントシェル装着時専用靴にします。
で、27.0cmがやはりいいと再確認する結果になりました。
たった0.5cmの違いなのに・・・

たしろ さんのコメント...

To:T.Yさん
おおお、熱心に実験、観察なさってますね。
そういえば肝心なことを忘れていましたが、T.Yさんがフルマラソンを走る方なのか分かりませんが、つま先ノック法はシューズを履いた直後の勘弁なチェック方法だと思います。なので、実際に25kmくらいは走ってみないと、靴と足の関係にどんな影響があるのか分かりません。
幅が良くても、足長が短い場合「白爪」「黒爪」になる可能性もあります。また、靴のラインが当たって水ぶくれになったり、靴擦れしたり...
いろいろ考えられるので是非実走して追試されることをお勧めします。